2015年2月26日木曜日

レコードと花

 八ちゃんがこの頃おりこうさんになったおかげで生活が快適になった。ゴミ箱をあさらなくなったので、八ちゃんから見えない台所のすみっこに置かなくても良くなった。紙くずを普通に捨てられる当たり前の心地よさ、再発見。引きだしの中身を洗濯ネットに入れておく必要もなくなった。何を取るにもチャックを開閉するまどろっこしさ、卒業。リモコンもボックスティッシュもDVDデッキもいたずらしなくなった。だんだんこうして人間(現代人)のルールを学んでいくのだなぁ。
 いちかばちかレコードプレイヤーを手の届く場所に置いてみた。吉ちゃんが赤ちゃんだった八年ほど前から、プレイヤーはピアノの上に置きっぱなしで年に一度、聞くか聞かないかという状態だった。
 吉ちゃんは幼稚園生の頃からレコードを聞くのが好きだったので大喜び。すぐにレコードの扱い方や針の置き方を覚え、休日の朝や学校から帰ったらすぐにレコードを聞くようになった。
 八ちゃんは、スタートボタンやピッチはさわるけれど、「針だけはさわらないで」と言い聞かせたら、ちゃんと約束を守ってくれている。八ちゃんは「はり」をわざと「いと」と言ってボケる。「いと!いと!」と言ってレコードに針を置けとせがむ。音楽は何でもよくて、赤い光やレコードが回転ているのを見るのが好きな様子。
 私が子供のころから持っているムーミンのLPは、自分が聞いていた時のことをうっすら覚えている。お友達数人と体育座りをして聞いていると、母が「パンツが見える」と言いながら、スカートのすそをひっぱってかくしてくれた。1970年製造のレコードだが、いくつの時だったのだろう。
 寒い時期だけれど陽がさしていれば午前中のベランダはぽかぽか暖かい。午前十時に家事がひと段落すると、窓辺に座って足だけベランダに出しながら八ちゃんと二人でお茶を楽しむようになった。先日は私はコーヒー、八ちゃんはバナナミルク。ベートーベンのピアノソナタをかけながら、「こんな時間があじわえるようになったか・・・」としみじみ思ったとたん、八ちゃんがバナナミルクをこぼしてあっという間に終わってしまったけれど至福のひとときだった。
 「ベランダに花があったらもっといい!」と思い、デイジーとアイビーの苗を買って寄せ植えした。吉ちゃんが学校へ行っている間、電車に乗ったのもカフェで食事したのも、八ちゃんと二人だけでするのは初めてのことだった。カフェと言ってもベローチェ、食事と言ってもサンドウィッチとあんぱんだったけれど。少し前までは植物を育てる心のゆとりなんてなくて、吉ちゃんが夏休み期間だけ持ち帰ったプチトマトの鉢植えさえ「面倒くさい。ベランダが狭くなって嫌だな。」と思っていた私が、自ら育てる気になるなんて、やっぱり育児がだんだん楽になってきたんだな。


 

 
 
 

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