2014年6月13日金曜日

グソクムシウインナー

 吉ちゃんの遠足の前夜、夜中十二時過ぎに帰ってきた主人とパソコンをやりながら話しているうちに、ウィンナーで作ったグソクムシ(深海の巨大なダンゴムシ)の画像を見つけた。丸まった背中やピンと伸びた触覚、うじゃうじゃ細かい足などグロテスクなほどリアルに出来ていて、作り方まで載っていた。「これを明日の弁当に入れてあげたい。きっと吉ちゃん喜ぶ!」と主人は大興奮し、二人で作り始めた。細かい切り込みを入れるのに苦労して中々うまくできず、焼いては修正を何度か繰り返し、二時頃にようやく完成した。私は力作を一匹だけ、主人は型崩れしてもはやムシと呼べないもの(かつてグソクムシと呼ばれていたウィンナー)を五匹ぐらいと、ダイオウイカと命名したタコさんウインナーを完成させた。
 主人は自分の作品をそっちのけで、私が作ったのを何枚も写真に撮っていた。たとえ、やたら切り込みが入ったぐちゃぐちゃでも、夜中に愛情込めて作ったんだから、記念に撮ればいいのに…と思いつつ、勝ったような気がして何だか気分が良かった。結局弁当箱のスペースの都合で私の一匹と、主人のダイオウイカ一匹だけお弁当に入れた。
 「ビックリしたかな?友達になんて言われたかな?女の子は嫌がったかな?」などワクワク想像しながら吉ちゃんが遠足から帰ってくるのを待ち、いざ感想を聞いてみると「おいしかった」と、形より味の第一声だった。友達の反応を聞くと、最初に食べちゃったから誰にも見せられなかったと、残念そうに話した。にんまりしながら箸でグソクムシをつまんで観察し、そのままパクリと食べた吉ちゃんの姿が目に浮かんだ。
 その夜遅くに仕事から帰ってきた主人が「会社であのグソクムシウインナーの写真を見せたら皆、驚いていた」と言いながら、「すごい!」「感動!」など絶賛されたメールのやり取りを、誇らしげに見せてきた。すると、私の力作はちゃっかり主人が作ったことになっている。自分の作品を撮らなかった訳はこういうことか!このペテン師!詐欺師!!
 それから夫婦喧嘩が勃発したのは言うまでもない。




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